いつか赤ちゃんが欲しいなら知っておきたい「社会性不妊」の実態

現代の日本では、不妊に悩むカップルが増加しています。ある調査によれば、7~8組中1組の夫婦が「子どもができにくい」と悩んでいるそうです。

結婚して何カ月も避妊をせずにセックスしているのに、なかなか授かることができないとなると、「もしかして自分は妊娠できない体質なのでは?」と不安になるものですが、そうした理由で婦人科を訪れる女性の多くは、まったくの健康体なのに妊娠できない状態が続くことがあるそうなのです。

身体に問題はないのにどうして不妊で悩むの?と疑問ですが、その背景には「社会性不妊」という現代病が潜んでいます。今回はその実態に迫ってみましょう。

社会性不妊ってなに?

社会性不妊って聞きなれない言葉ですが、医学の世界ではどのように定義されているのでしょうか。医学博士・放生勲さんは著書『卵子を守る!妊活レッスン』のなかで、「社会性不妊」とは、社会環境との兼ね合いで、妊娠しづらくなっているという状況を指すと説明しています。

社会性不妊の原因1:女性の社会進出

現代は女性の社会進出が進む、女性の力が日本の労働力としてなくてはならないものになって、女性の結婚年齢が高齢化、そして少子化が進みました。これまで述べてきたように、年齢を重ねること自体が、卵子のエイジングを進めていきますので、妊娠しづらい状況になっていきます。

私の周りでも結婚と妊娠のタイミングで悩む女性はすごく多いです。

銀行で働くA子(30歳)さんは、1年付き合っている彼氏にプロポーズをされたものの、このタイミングで結婚してしまうと職場での昇進の機会を逃してしまうという理由から、「2年先まで待ってほしい」と彼氏に伝えたそうです。

彼は了承してくれましたが、2年後は32歳。仮に昇進できたとしても、仕事が落ち着く保障はどこにもありません。実際、彼女自身も「仕事はずっと続けたいけど、結婚して子どもも欲しい。中途半端に管理職についてしまったら、ますます忙しくなりそうだし…いつ妊活するんだろう」と悩んでいました。

働く女性にとって「仕事と妊活」の両立は大きな課題ですよね。

社会性不妊の原因2:メディアの情報

さらにメディアが発信する情報というのにも、注意しなければいけません。雑誌、テレビなどを通じて、「誰それさんが、45歳で子どもを出産した」、また、「何がしさんは、40代後半で体外受精に取り組んでいる」などといった報道が、しばしば見られます。(中略)しかし女性が45歳で出産するということは、一般的なことではありません。ですから報道というのは、割り引いてみる習慣を持つことが大切だと思います。

高齢出産をする芸能人がテレビや雑誌を通してポジティブに報じられることもそうですが、それに加えて私の場合は、「授かり婚」も若い世代に「子どもはすぐできるものなんだ」という誤解を生みかねないと思っています。

最近は結婚するカップルの3~4組に1組は「授かり婚(子どもができてから結婚すること)」と言われていますよね。

テレビで「芸能人の●●さんが結婚しました。現在、妊娠●カ月だそうです」といったニュースが伝えられたり、身近なところで「●●さんがデキ婚した」という話を聞いたりすると、「またかよ!避妊しないと子どもってすぐできちゃうもんなんだな」という受け止め方をしてしまいませんか?

少なくとも私はそう思っていて、独身の頃はうっかり子どもができないようにコンドームを使った避妊に加えて、ピルも服用していました。でもいざ結婚して子作りをはじめると、排卵日に狙い撃ちセックスをしてもなかなか授かりません。(笑)

もちろんはじめから基礎体温をつけていたわけではなく、セックスの回数そのものも少なかったため、授かりにくいこともあったのですが…。避妊をせずにセックスをするようになってから初めてお腹に赤ちゃんが宿るまで1年弱かかりました。

感覚的には3回ぐらい狙い撃ちセックスをすれば、子どもなんてすぐにできるでしょと思っていたので、妊娠って意外と大変なんだなぁと実感したのを覚えています。

不妊治療に進む前に

最近は「不妊治療」という言葉が社会に広く浸透したことから、「子どもができづらいな」と思ったらすぐに婦人科へやってくる女性も少なくないそうです。

もちろん健康な体がどうかをチェックしておくことは悪くないのですが、それよりも先に自分たちで取り組めることはたくさんあります。

「不妊かも…」と深刻に思い悩む前に、妊活にむけた基本の3項目を今日から始めてみましょう。

1.基礎体温表をつける

基礎体温をつけると排卵の有無やタイミングを把握することができます。毎日同じ時間に測るのを習慣にするのは難しいかもしれませんが、まずは数カ月間記録を続けてみましょう。体温の変化を知ることで「そろそろ生理が近いから疲れやすいかも。夜はのんびり過ごそう」など、体調管理もしやすくなりますよ。

2.排卵日検査薬を使う

もっと正確に排卵日を知りたい人は、排卵日検査薬を使うのもおすすめです。薬事法が改正されて以降、購入できるドラッグストアは限られてしまいましたが、インターネットで「排卵日検査薬を買える薬局」などと検索すれば、最寄りの薬局を簡単に探すことができます。

3.セックスを増やす

意外と見落としがちなのが「セックスの回数」です。結婚に至るまでの交際期間が長ければ長いほど、セックスの頻度は少なくなりがち。妊娠をするためには最低でも月に1回はセックスをする必要がありますが、そもそも何カ月もご無沙汰というカップルも多く、「子どもは欲しいけど今更セックスなんて…」としらけてしまう人も。

これは特に男性側に多く、女性が基礎体温や排卵日検査薬などでせっせと妊活に励んでいる姿をみると「子作り」というプレッシャーがパートナーの性欲を低下させてしまうそうです。

ちなみに、アメリカの産婦人科医の話では、不妊の悩む女性に「セックスの回数を二倍に増やしてください」といったところ、妊娠をするカップルが続出したそうなのです。セックスの回数が減っているカップルが、不妊治療をはじめると、ますますセックスから遠ざかってしまう傾向があるのだそう。

いざ子どもが欲しいと思ったら、病院に頼るよりも前に「セックスにも新鮮さをキープする工夫」が必要なのかもしれませんね。